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不動産売却における災害のリスク。売却価格への影響と引き渡し前の損害

毎年のように災害が起きる日本列島ですが、その度に大きな損害を被るのが不動産です。売却に当たってもマイナス要因となりますし、引渡し前の不動産が災害にあったらどうしようと不安になるケースも多いのではないでしょうか。今回は不動産売却と災害というテーマでお届けします。

台風や地震で警戒すべきは土砂災害や洪水

台風や地震で警戒すべきは土砂災害や洪水
土砂災害とは土石流や地滑り、崖崩れなどを指し、台風による雨や地震による衝撃で地盤が緩くなることで発生します。2019年の台風ハギビスの被害では、土石流によって飲み込まれた家や、川沿いで地滑りを起こし川に倒壊する家の映像などがメディアで度々流されました。洪水で川が氾濫し、町中が水没する様も衝撃を与えました。
こういった土砂災害や洪水の危険が高い地域は、自治体のホームページで公開されているハザードマップで確認することができます。
土砂災害に関しては法律で土砂災害警戒区域と土砂災害特別警戒区域が定められており、物件の売却に際して規制が発生する場合があります。

土砂災害警戒区域の売却に関する規制

土砂災害警戒区域はハザードマップではイエローゾーンと呼ばれています。特に物件の建設や売買に関して制限はありません。ただし、売却する土地や物件がイエローゾーンにある場合は、買主にその旨を告知する義務があります。具体的には重要事項説明書に土砂災害警戒区域に指定されている旨を記載しなければならないのです。
普通の土地に比べると買主にとってリスクがありますが、相場はそこまで下がりません。しかし、売却後に買主が様々な補強工事などを行うことも考えられますし、土砂災害警戒区域が土砂災害特別警戒区域に格上げされてしまう可能性もあります。土砂災害警戒区域に立つ物件を売却する際には、その土地のことをよく知る不動産業者に依頼をするのが無難です。

土砂災害特別警戒区域の売却に関する規制

土砂災害特別警戒区域はハザードマップではレッドゾーンと呼ばれています。不動産の売買に関しては明確な規制があり、契約を締結する際に県知事の許可を得なければなりません。手続きも面倒ですし費用もかかります。
ですので、すでにレッドゾーンに指定されている土地に物件を建築しようという人は稀です。しかし、古くからその土地に住んでいたが、居住中に家の場所が土砂災害特別警戒区域に指定されてしまったケースもあるでしょう。そういうケースだといざ売却したいとなっても苦労することが予想されます。価格自体は大幅に下がりますし、それでも買い手が見つからないというのはザラです。

売却交渉中の物件が災害にあったらどうしよう

売却交渉中の物件が災害にあったらどうしよう
すでにレッドゾーンやイエローゾーンに指定されている物件の売買であれば、そもそもあまり期待もしていない人が多いはずです。しかし、通常はあり得ない未曾有の災害や不運なトラブルで売却交渉中の物件が損害を被る可能性だってあります。

原理原則でいうと契約成立後は買主の責任

不動産の売却契約が締結されたからといって、すぐに物件の引き渡しやお金をもらえるわけではありません。買主にとってはローンの契約もあるでしょうし、引っ越しの準備もしなければいけないでしょう。1〜2週間程度は契約から引き渡しまで間が空くのは普通です。
しかしこの間に災害で物件が損壊することは十分考えられます。引き渡しの3日前に台風による浸水で2階建ての一階が住めない状況になってしまうかもしれません。そういった場合の修理費用は売主買主どちらが持つのでしょうか。
このケースだと原理原則は買主負担です。根拠としては「債権者主義」というところで、物件に対して債権を持っている側が費用を負担するのです。
しかし買主の心情としては「入居もしていない物件の修理費用をなぜ払わなければならないんだ!」となるのは自然であり、この部分でトラブルになるケースは多いです。こういったトラブルを避けるために、契約書に「危険負担」についての取り決めを記載するのが一般的です。

危険負担とは

危険負担は「引き渡し前に物件が災害等で損害にあった場合の修理負担についての取り決め」です。
この危険負担について契約書に記載されていないと、前述のように全てが買主負担になってしまいます。ですので危険負担は「どういった場合を例外として扱うか」に関する内容です。例えば、「引き渡し前の双方に過失がない損害に関しては修理費用を折半にする」などがあり得ます。
危険負担はあくまで売主買主双方の過失でない損害で適用される取り決めです。どちらかに過失があるケースだと適用されません。売主が消し忘れたタバコの日が原因の火災であれば売主が修理費用を負担することになりますし、買主が車の駐車時にミスをして外壁を傷つけたのであれば買主の負担です。

危険負担で売主が気をつけなければいけないケース

不動産売買契約を結んだ後は、基本的にはキャンセルはないものとして手続きが進んでいきます。もし万が一キャンセルになった場合は、すでに買主から受け取っている手付金は返金する必要はありません。手付金は購入金額の5〜20%に設定されています。仮に10%に設定して5000万円の物件を売却する場合、売主には契約時に500万円は入ってくることになります。
バカにできる金額ではありませんので、手付金を諦めてまで購入をやめる買主は多くありません。しかし、災害等であれば話が変わります。
「安全な場所だと思って契約したけれど、引き渡し前の災害で驚いた。修理すれば住めなくはないが、ここに住むのは怖い」と考える買主がいても不思議ではありません。家族の安全と手付金を天秤にかけた時に、手付金を放棄してでも別の家を探す方は多いのです。
理屈的にはわかりますが、売主としてはたまったものではありません。家の修理をする上にそれが売れないとなっては大損害です。ですので、危険負担の取り決めをする際に「修繕可能な損害の場合、契約解除不可」という但し書きをつけておく必要があります。

家がなくなってしまったら契約は強制解除

ここまで述べたのは家に修理が発生する場合です。それでは引き渡し前に大地震や大津波で売却予定の家が消えてしまった場合はどうなるのでしょうか。
この場合は引き渡すべき物件が消滅してしまったわけですから売主は契約を履行できません。ですので、契約そのものがなかったことになり買主には負担は一切生じず、売主は受け取った手付金を返還することになります。

危険負担についてしっかり決めておこう

危険負担についてしっかり決めておこう
ここまで見たように災害は不動産の売主にとってかなり大きいリスクになります。「でも保険に入っているから」と考え油断している人もいるかもしれませんが、不動産の売却の契約をした時点で、売主が建物にかけていた保険は解約しなければならないのです。言ってみれば、契約から引き渡しまでの期間は一番トラブルが起こりやすい空白期間なので、買主との間で万が一の時の取り決めをしておかなければなりません。
時期やエリアによって災害のリスクは異なります。不動産会社のプロに売却予定のリスク対策についてアドバイスを受けてはいかがでしょうか。

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